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歯医者で感染する病気

感染予防

歯医者で感染する病気

歯医者で感染する病気のイラスト

歯医者で感染する病気のイラスト

目次

歯医者で感染する病気の例
歯医者の感染経路の特徴
一般的な感染経路
血液感染の防止
プリオン病とは?
プリオンの滅菌条件
アルパーク歯科の感染予防の方向
アルパーク歯科の滅菌の現状
ご注意

歯医者で感染する病気の例

B型肝炎ウイルスのイラスト

B型肝炎ウイルスのイラスト

歯医者で感染する、危険な病気は、

  • B型肝炎ウイルス(HBV)
  • C型肝炎ウイルス(HCV)
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

が代表的とされていました。
近年、プリオン病が加わっています

虫歯菌、歯周病菌は、
感染したらイヤだなと思いますが、
通常の滅菌で滅菌されます。
歯医者で感染する病気とは言えないでしょう。

ちゃんと滅菌されていれば。の話です。

歯医者の感染経路の特徴

歯科における感染経路の特徴のイメージ画像

歯科における感染経路の特徴のイメージ画像

歯医者で病気が感染する経路の特徴は、

  • 他人の血液から感染する危険が高い
  • 削る時、歯石を取る時に、飛沫が出る
  • 内科や病院の様に、感染症の方が集まる所ではない

ではないでしょうか。

歯医者では、とくに血液感染を防ぐ必要があります。

空気感染、接触感染などは、飛沫を考慮して、
空気手が触れる所は、
清潔にする必要があります。

空気、接触、経口感染は、
歯医者が特別なわけではなく、
病院や人が密な場所の方が、
(電車の中、ショッピングモール、繁華街、コンサートなど)
感染の確率は高いかも知れません。

一般的な感染経路

一般的な感染経路は、

  • 血液感染、
  • 飛沫感染、
  • 空気感染、
  • 接触感染、
  • 経口感染、

があります。

それぞれ特有の伝染病があります。

血液感染の防止

血液感染の防止のイメージ画像

血液感染の防止のイメージ画像

熱に強く、滅菌しにくい病原体・微生物は、

  • プリオン
  • B型肝炎ウイルス
  • 枯草菌(芽胞をつくる細菌)

などです。

他の病原体は、これらより熱に弱いものです。

これらが滅菌できれば、歯医者で感染する病気はないと言えます。

以前の滅菌

以前は、医療機関の滅菌は、
B型肝炎ウイルスが滅菌ができる条件で、滅菌されていました。

プリオン以降の滅菌

1990〜2000年代、プリオン病(クロイツフェルトヤコブ病)が発生しました。
ところが、
プリオンは、以前の滅菌条件では滅菌できないのです。
それで、医療の世界では、
滅菌を組み合わせて、対応することになりました。

組み合わせた滅菌条件
  • アルカリ洗浄+高温のオートクレーブ
  • 洗浄+高温のオートクレーブを長く
  • 洗浄+プラズマ滅菌

が良いとなっています。

器具類を乾燥させない

プリオンタンパクは、乾燥すると熱に異常に強くなります。
そのため、アルコール消毒に頼らない事が必要になりました。
アルコールで器具を拭くと、
器具が乾燥し、
プリオンタンパクが、固着してしまうからです。

従来の滅菌の常識を変える事が大切です。

プリオン病とは?

狂牛病の牛のイメージ画像

狂牛病の牛のイメージ画像

概説

狂牛病の人間版。
発症すると、急速進行性の認知症を呈し、100%死亡する。
治療法は無い。

潜伏期間は、2年から30年。

頻度

2021年の患者数
日本で、179人。男性78人、女性101人。

広島県では
5人、男性1人、女性4人。

国立感染症研究所 から

原因と伝播

病原因子であるプリオンは、正常プリオン蛋白質が、何らかの理由で異常プリオン蛋白質に転換したもの。
正常蛋白質を次々に異常化し増殖する。
他の個体にも感染する。

血液製剤などからの感染を除くと、

孤発性というのがあり、感染経路が分かっていません。

組織の感染性

・感染性の高い組織

脳、脳脊髄、脊髄、網膜、視神経、脊髄神経節、三叉神経神経節、下垂体、硬膜

・感染性の低い組織(口の周辺だけ)

末梢神経(脊髄神経節と三叉神経節を除く)、
骨髄血液、扁桃、リンパ節、骨格筋、血管、鼻粘膜、唾液腺

・感染性が検出されていない臓器・体液(口の周辺だけ)

皮膚、脂肪組織、歯肉組織、歯髄、気管
唾液、汗、涙液、鼻粘液、尿、便

リスク

・ハイリスクは、脳外科と、眼科の手術です。

・歯科のリスクは、そこまで高くない。

プリオンの滅菌条件

プリオンの滅菌のイメージ画像

プリオンの滅菌のイメージ画像

推奨の条件

●推奨1

ウォッシャーディスインフェクター (WDs) によるアルカリ洗浄
+真空脱気プレバキューム高圧蒸気滅菌 134℃、 8〜10 分間
(アルパーク歯科で、採用している滅菌条件です)

ウォッシャーディスインフェクターの内部の写真

ウォッシャーディスインフェクターの内部の写真

これは、当院にある、アルカリの熱水で洗浄できる、
ウォッシャーディスインフェクターです。

EU 規格 E N13060 クラス B 規格オートクレーブの写真

EU 規格 E N13060 クラス B 規格オートクレーブの写真

上は、当院にある、EU 規格 E N13060 クラス B 規格オートクレーブです。

●推奨2

適切な洗浄剤による十分な洗浄( 洗浄剤の濃度、洗浄温度等はメーカーの指示に従う )
+真空脱気プレバキューム高圧蒸気滅菌(134℃、18 分間 )

●推奨3

十分な洗浄 *( 洗浄を2回繰り返すことも推奨される )
+過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌

などが推奨されています。

プリオン以前の滅菌条件

普通の細菌 (大腸菌など) は、121℃, 1分
B型肝炎ウイルス、枯草菌は、121℃(2気圧) 5分

B型肝炎ウイルス、枯草菌が、一番滅菌しにくかったため、
B型肝炎ウイルスが滅菌できれば、他の病原体は滅菌されているという事です。

プリオン病に対する、フランスのガイドライン
    • 水酸化ナトリウム (NaOH)1 規定、18〜25℃で1時間
    • 次亜塩素酸ナトリウム (NaOCl)20,000ppm(2%)18〜25℃で1時間
    • 真空脱気プレバキュームオートクレーブ (134.0℃で 18 分間 )

が示されていました。
水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食するし、
強アルカリのため扱うのが危険ですから、
日常の滅菌には使えません。
そのため、洗浄器によるアルカリ洗浄と、オートクレーブを組み合わせる折衷案が採用されています。

プリオン病感染予防ガイドライン(2020 年版) から要約

過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌

室温で滅菌でき、熱で材料を痛めませんから、とても良いと思いました。
しかし、紙、布は不適。
滅菌器の値段が350万、1回の滅菌ごとに1,000円以上費用がかかります。
気軽には、滅菌しにくいもので、
すべての歯医者が導入するという事は、かなり難しいでしょう。

プリオンに無効な滅菌法

  • 乾熱滅菌
  • ガス滅菌
  • 薬液滅菌

は、プリオンに対する有効性が示されていません。
ですから、当院では、ほぼ、用いません。
〇〇水などという電解水なども、導入しません。

アルパーク歯科の感染予防の方向

アルパーク歯科の感染予防の方向に関するイメージ画像

アルパーク歯科の感染予防の方向に関するイメージ画像

歯科ではプリオン病の感染性がない、とは言い切れないと思います。
そのため、
プリオンを基準にした、感染予防策に努めています。

歯科で扱う組織の感染性

⚫︎感染性の高い組織

なし。

⚫︎感染性のない組織

歯茎、歯髄などは、感染性がないそうです。

⚫︎感染性の低い組織

舌、血液、骨髄は、
歯医者で触れる事が多い組織です。
唾液線、扁桃腺などは、
一般の歯医者で扱うことは少ないでしょう。
大病院で扱うことになります。

⚫︎血液

歯磨きが不十分な人は、
容易に出血します。
特にフロスが不十分でも、出血します。
治療しなくても、歯茎に触れただけで、出血するのです。

歯周病で歯石を取る時は、
ほとんどの場合、出血があります。

歯を削る時も、出血している事が多い様です。

以前、取引のあった歯科技工士さんが言っていました。
「先生のとこの石膏模型は、血がついてないですね。
他のとこのは、けっこう血がついてるんですよー。」
この様に、患者さんは気が付かないかもしれませんが、
歯医者の治療では、多くは出血を伴っているのです。

⚫︎骨髄

歯科では、小手術でも、骨髄に達する事が多いものです。
インプラント、親知らずの抜歯、歯根端切除、歯根嚢胞除去など。

標準予防策

スタンダードプリコーションという概念がアメリカで提唱されました。
全ての患者さんの血液体液などを、感染性のあるものとして扱う。というものです。

  • 感染症は潜伏期があるため、感染していても気が付かない。
  • 感染していることを隠す人がいる。

そのために、
全ての人が感染者かもしれないと思って予防すれば、
感染を防止できますね、と言う事です。

これが提唱された頃は、
一番滅菌されにくい、B型肝炎ウイルスを標的にしていれば良かったのですが、
今は、プリオン病があります。

日本で、年間200人に満たない感染者のプリオン病に、
歯科では、感染力は高くないと言われている現状で、
歯医者さんは、どこまで取り組めば良いのでしょうか。
可能な限り取り組む。
という答えに、アルパーク歯科では、なると思います。

アルパーク歯科の滅菌の現状

アルパーク歯科の滅菌の現状のイメージ画像

アルパーク歯科の滅菌の現状のイメージ画像

歯医者ではプリオン病の感染性がない、とまでは言えないと思うため、
プリオンの感染防止を基準にした、
感染予防策に努めています

患者さんに触れるもの

●熱滅菌できるもの

一番確実だと思う、
ウォッシャーディスインフェクター (WDs) によるアルカリ洗浄
+真空脱気プレバキューム高圧蒸気滅菌 134℃、 8〜10 分間
で、滅菌しています。

ほぼ金属の機械・器具です。
耐熱プラスチックも、上記の様に処理しますが、
もろくなってくるため、使えなくなったら捨てます。

●熱滅菌できない物

患者さんに触れる器具類で、熱滅菌できない物は、使い捨てです。
ディスポにできない物は、使っていません。

●技工物

セラミックの冠・詰め物
入れ歯
矯正器具

これらは、技工士さんが作ってくれて、
当院に入荷したものです。

次亜塩素酸ナトリウムか、アルコール消毒します。
他人の口の中に入っていた物ではありませんし、
他人の血液にも触れていないからです。

アルパーク歯科の冠・詰め物は、
銀歯は使わず、全部、ジルコニアというセラミックです。
次亜塩素酸で変質などしません。

患者さんに触れない物

●顕微鏡のレンズカバー

これのみ、薬液消毒です。
プリオン病に対する、フランスのガイドラインで推奨されている滅菌条件です。
次亜塩素酸ナトリウム (NaOCl)20,000ppm(2%)18〜25℃で1時間以上で、
滅菌しています。
プラスチックで熱をかけられない。
患者さんに触れることはない。
という理由で、次亜塩素酸を使っています。

●機械装置類

機械装置は、大きいし、電気回路があるため滅菌できません。
ビニールカバーをして、
お口を触った手袋で触れても、機械類が汚れないようにしています。
治療後は、ビニールカバーは廃棄します。

装置のお口に入る部分は、
患者さんに触れる器具類として、取り外しになっていて、
治療後は、洗浄・オートクレーブ滅菌します。

ご注意

滅菌に関するご注意というイメージ画像

滅菌に関するご注意というイメージ画像

滅菌しない歯医者さんがあるらしい

以前、ある歯医者さんに勤務していた方から聞いた事があるんです。
そこは、駅前のとても大きな歯医者さん。
ビルも大きく、患者さんがたくさんお越しになって、地域の人々から信頼されている感じですよね。

ところが、
滅菌を充分していないというんです。
保険の歯医者さんだから、基本、患者さんを、たくさん回転させる形。
診療台(ユニット)も10台以上ある。
だから、
器具がたくさんあり過ぎて、滅菌が追いつかない。
それで、洗って消毒だけにしているのだそうです。
「今時、信じられない。病気がうつってるんじゃない?」と思いましたが、
そこに勤務していた人が、そう言うのです。

ですから、
歯医者さんの感染予防については、よくお調べくださいませ。
こんな歯医者さんに行くと、病気が感染する事があるかもしれません。

患者さんが少ない歯医者で、やむなくそういう状況に追い込まれる事はあるかもしれませんが、
患者さんがあふれていても、滅菌が不十分な歯医者さんがある事に、ビックリします。

消毒した歯ブラシ

歯磨き指導の時、
他人が使った、消毒した歯ブラシを出して、
歯を磨いてもらう歯医者さんもある様です。
気持ち悪いです。
片側が透明なビニールで、反対側が紙でできた袋に入った歯ブラシや、
商品のパッケージに入っていない、むき出しの歯ブラシを持ってきた時は、
消毒した歯ブラシの可能性があるかもしれません。
ビニールと紙でできた袋は、滅菌バッグと呼ばれる袋だからです。
新品の歯ブラシは、
透明な、商品としてのビニール袋に入っているか、箱に入っています。

この記事を書いた人亀田浩司

医)アルパーク歯科・矯正・栄養クリニック 理事長

自由診療専門歴約20年の歯科医。

矯正をして、自分が変わりたいと思っている人のサポートをしたいと思っている。

長崎大学歯学部卒業、広島大学歯学部付属病院をへて、アルパーク歯科開業。
より良い治療のため、自由診療専門に変更し、歯科医5人まで拡大。

その後、個人を大切にする内容に変え、現在、患者数1日2人にしている。

一般的な歯科治療に満足できない患者さんが来院している。

一般歯科の目標 「あなたもできる20年虫歯なし」
矯正歯科の目標 「歯並びも、人生も、良くなる矯正」

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